二十四節気

 

啓蟄
<3月6日>

けいちつ
二十四節気のひとつ。太陰暦だと2月上旬、太陽暦だと3月6日頃にあたる。冬の間、地中で巣籠もりしていた蟻や地虫、蛇や蛙などが、暖かくなりはじめ地上に出てくる。古く中国で、虫は人を含む動物の総称であるとされ、長い冬ごもりから解放される喜びの時季である。またこの頃初雷がとどろくことが多く、それを「虫出しの雷」とも「蟄雷」などとも呼んだ。

 

七十二候・花の七十二候

 

蟄虫啓戸
<3月6日〜10日頃>

ちつちゅうこをひらく
七十二候のひとつ。匂い立つ沈丁花が色褪せる頃、長い冬籠もりから解放され、春の訪れを満喫したいと戸外へ出て下萌えた大地を歩く。大地には、春を待ちわびた虫たちが、散った花びらの中から顔を出す。ふと仰げば、青空を背に白い辛夷が、筆尖のような蕾を一斉に開き咲き乱れている。中国ではこの花を望春花と呼んでいる。

 

 

木蓮連咲
<3月6日〜10日頃>

もくれんつれてさく
花の七十二候のひとつ。開花時期は3月上旬頃〜4月下旬頃。原産地は中国。読みは、木蓮科の漢名である「木蘭」の音読み「もくらん」が「もくれん」に変化。花はけっこう大きく、外側は赤またはピンク色で内側は白く、そのコントラストが美しく、葉が出てくる少し前に咲きだす。「紫木蓮」「唐木蓮」などの種類がある。

 


 

桃始笑
<3月11日〜15日頃>

ももはじめてわらう
七十二候のひとつ。古来より、花は風に語り、風は人に便りする、といわれるが、この時季は桃花の競い咲く頃となる。見渡すかぎりの野面を染める淡紅色の景色は、まさに桃源郷と呼ぶにふさわしい。桜花は朝日に似合うが、桃花は夕陽に眺める花。沈みかかった夕陽さす丘に上がって、春の「花風信」に瞬時を忘れて思い佇む。

 

 

木筆書空
<3月11日〜15日頃>

こぶしそらにしょする
花の七十二候のひとつ。開花時期は3月中旬頃〜4月中旬頃。昔は、この花がもっとも早く咲くところから農作業のタイミングを判断し、咲く向きから豊作になるかを占ったりした。蕾が開く直前の形が子どもの「にぎりこぶし」に似ているところからと、実はゴツゴツしているところから「こぶし」と命名されたとの説もある。

 


 

菜虫化蝶
<3月16日〜20日頃>

なむしちょうとけす
七十二候のひとつ。麗らかな春陽の田園を歩く。キャベツ畑のわきを通れば、思いかけず紋白蝶が群れて飛び交う景色に出くわす。葉裏に蠢いていた青虫が、千変万化を遂げて蝶になって舞っている。軽やかに花と戯れる蝶の姿は、現実と夢を行き交う旅人のようである。化生の見事さに驚嘆しつつ春の野をのんびり歩む。

 

 

杏花可憐
<3月16日〜20日頃>

あんずのはなかれんなり
花の七十二候のひとつ。北半球の温帯に分布し、中国原産で奈良時代に渡来した。中国ではこの木で矢を作ったので「矢の木」といい、「やのき」が「やなぎ」へと変化した。枝垂柳は早春に芽を出し、やがて若葉が青々と伸びるので青柳という。葉だけを見ると「川柳」に似ているが、枝がしだれるので区別できる。